2009年3月28日(土)、同志社大学 技術・企業・国際競争力研究センターと、(株)NTTデータ システム科学研究所の共催で、「知識資産経営と組織パフォーマンス −人材・知識・ICTの融合の時代−」が開催されました。 当日は、週末にもかかわらず、知識資産経営に関心を持つ関西圏のビジネスマン、研究者の方々を中心に、ご参加いただきました。当日の内容を簡単にご報告します。
日時:2009年3月28日(土)13:00−16:00
場所:同志社大学 寒梅館
前半 13:00-15:00
1)「ダイナミック知識資産経営(Managing Knowledge Asset)」:
紺野 登(多摩大学大学院教授、KIRO株式会社代表)
2)「DNP P&Iソリューションの取組」:
中島良彦(大日本印刷株式会社 C&I事業部 マーケティング情報開発室室長)
3)「日本企業の知識資産経営:コーポレート・ソーシャル・キャピタルと情報システム」:
小豆川裕子(NTTデータ システム科学研究所 主幹研究員)
三好 博昭(同志社大学 技術・企業・国際競争力研究センターディレクター)
金田 重郎(同志社大学 理工学部教授)
後半 15:10-16:00 パネルディスカッション
コーディネータ:高木 聡一郎 (NTTデータ システム科学研究所 副主任研究員)
まず、多摩大学大学院教授で、KIRO株式会社代表の紺野登教授より、「ダイナミック知識資産経営」と題して講演をいただきました。紺野先生からは、市場の境界や競争相手が不透明になる中、分析型の経営から創造型の経営に移行しつつあるという認識のもと、オープン・イノベーションに代表されるイノベーションの質的変化について議論を提起されました。こうした新たな経営環境においては、知識資産を静態的にとらえるのではなく、知のダイナミックなネットワークとしてとらえることの重要性を示されました。その上で、知識創造の場のあり方について議論され、その例としてフューチャー・センター等の事例について紹介されました。
次に、大日本印刷株式会社 C&I事業部 マーケティング情報開発室室長の中島良彦氏より、同社の取り組みについて「DNP P&Iソリューションの取組」と題してご講演いただきました。中島氏は、同社の経営理念である「創発」というコンセプトを紹介されました。同社における「創発」とは、「自立性と多様性をもった個と個の相互作用のなかから、予期せぬ現象が生み出され、その結果がまた個に影響を与えること」を意味しています。同社では、こうした創発を実現するため、コラボレーションを意識してセキュリティレベルを変更できる会議室や、全館ショールームとして機能するDNP五反田ビルなどワークプレイス上の工夫、また、情報共有のツールとして「Solutions Dispatch」等を紹介されました。また、企業と生活者の知識・情報を巡る関係の変化について、コミュニケーションやマーケティングという観点からご紹介いただきました。
この後、(株)NTTデータ システム科学研究所と同志社大学 技術・企業・国際競争力研究センターの共同研究の結果について紹介を行いました。

(株)NTTデータ システム科学研究所 主幹研究員の小豆川裕子より、共同研究の全体概要とファインディングスを紹介しました。上場企業へのアンケート調査と財務データの分析により、知識資産経営への取り組み、特に個人と組織のインタラクション度が高いほど生産性や社員満足度が高い結果が得られたことが紹介されました。また、日本企業における事例調査や、米国の最新動向等から、組織内での知識共有だけでなく、知識創造のプロセスも重視されており、そこでは顧客等組織外とのインタラクションも重要になっていること、また、ITと対面コミュニケーションの組み合わせが重要であることなどが紹介されました。
続いて、同志社大学 技術・企業・国際競争力研究センター ディレクターの三好博昭教授より、知識資産経営と生産性について報告がありました。上場企業へのアンケート調査による知識資産経営に関する企業の取り組みと全要素生産性の関係について分析したところ、「個人・組織のインタラクション度」が高いほど企業の全要素生産性(TFP)が高い結果が得られたことが報告されました。また、企業システムにおける様々な取り組み(経営・組織構造、人的資源管理、ITインフラ、業務プロセス、知識交換の場の5つに分類)について、実施状況と全要素生産性の関連を分析したところ、カテゴリ個別には関係性は見られないが、全体としての取り組みの幅広さは、全要素生産性にプラスの影響を与えていることが報告されました。
これに続いて、小豆川裕子より、日本企業の知識資産経営の取り組み状況、知識資産経営と組織パフォーマンス、社員満足度との関連に関する報告がありました。個人の意識成熟度、個人・組織のインタラクション度が組織パフォーマンスにプラスの効果があることや、個人・組織のインタラクション度やITと対面コミュニケーションを活用し他知識・成果の共有が社員満足度にプラスの効果があることなどが紹介されました。
続いて、同志社大学大学院工学研究科/総合政策科学研究科の金田重郎教授より、データマイニングに関する事例について報告がありました。自治体の道路管理支援システムに投入された情報のマイニング事例より、業務に直接は関係のないデータが入力されないことや、データの正確性が低いことなどにより、マイニングが困難になることが指摘されました。その解決方法の一つとして、業務における原因への問いかけや、ナレッジコンシェルジュの設置などが提案されました。
後半では、パネルディスカッション及び来場者との質疑応答が行われました。パネルディスカッションでは、大日本印刷のより詳細な創発の事例が紹介されるとともに、紺野教授から、応用可能性を考慮して多様性のある技術展開を図ることにより、より効率的なR&D投資が可能になる点などが指摘されました。その他に、顧客とのイノベーションの横展開に関する課題、人事制度と情報共有の関連、コーポレート・ソーシャル・キャピタルと生産性に関するさらなる研究の必要性、新たな日本型経営の検討の必要性などが議論されました。会場からも活発な質疑応答があり、盛況のうちに終了となりました。
なお、当日の議論で紹介されました、同志社大学 技術・企業・国際競争力研究センターと(株)NTTデータ システム科学研究所の共同研究の結果については、下記の書籍で詳しく紹介されています。
『知識資産経営と組織パフォーマンス -人材・知識・ICTの融合の時代-』
【編著】小豆川裕子・三好博昭
【企画】NTTデータ システム科学研究所
白桃書房、定価3500円+税
システム科学研究所では、今後も知識資産経営に関する研究を発展させてまいります。皆様のご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
